992号「トップのサクセッション、誰?の前にすること」(メールマガジン「人事の目」)

トップは長くやらない方がいい。私の持論です。一人の人が長くやり過ぎると、その人が、どんなに人格的にも能力的にも優れていた方だったとしても、組織内に長期政権の副作用が目立ってきます。代表的な副作用は「トップの神格化」です。トップの発言を“神の声”のように崇め、その想いを慮り過ぎる人が増えます。

世の中の動きに関係なく、トップの意向を気にして仕事をすることが主流となり、社内政治がはびこり、組織が停滞します。次第にトップは“裸の王様”と化し、その周辺は“茶坊主”の集団となります。心あるものは会社を去り、その会社じゃないとやっていけない人たちの集団になってしまいます。

私がこれまで見聞きした事例から考えるに、いわゆる“サラリーマン社長”(非オーナー社長)の場合には7年を越えてトップを務めない方が良いです。7年を越えると急速に神格化します。在任中に急激な成長やV字回復があるとなおさらです。

オーナー企業の場合は違います。そもそも任期の設定が現実的ではないので、オーナー本人の意思に関係なく(その神レベルに濃淡ありますが)オーナーのトップは組織内で神格化してしまいます。

神格化したトップの後継者問題。この問題は「後継者を誰にするか?」という問題ではありません。その視点だけですと誰が後継者になったとしても、前任者と比較され、前任者のようにやれないとマイナス評価されてしまいます。新任トップが1年で早期退任。引退したはずのトップが復帰することになりがちです。

考えるべきは「誰にするか?」の前に「どういう集団にするか?」です。

組織は生態系です。トップの引力が組織生態に影響を与えています。この引力は「俺についてこい」型(求心力型)もあれば、「任せる」(遠心力型)もありますが、いずれにせよ、現職トップの個性によるものです。現職トップの引力を前提とする生態系のあり方を変えずに、現職者と異なる個性を有する後継者がトップの座につくと生態系がアレルギー反応を起こします。トップが代わるということは、この集団(生態系)も変わると考えるべきでしょう。

‐現職トップが退いた後に自社の顧客価値は変わるか?
‐その顧客価値をつくる組織体制や行動特性はどうあるべきか?
‐その組織を活性化させるトップはどういう人材か?

この3つの論点について、トップを除く現職のトップマネジメントチームメンバーで議論し、共通認識を得た上で「誰にするか?」の議論に移ることをお薦めします。指名報酬委員会があるところは、まさにこれがアジェンダとなります。

生態系そのものは幹部の人選で変わります。ここもトップの選定と同じです。新たな集団を率いる幹部はどういう人材であった方がよいのかを議論し、その視点から選定します。新体制になってしばらくはガタガタします。生態系が変わるということはそういうことです。ただ、新しいトップと新しい幹部が噛み合ってくるといつの間にかガタガタが消えます。気づくと新たな生態系が空気のように当たり前になっています。

トップのサクセッションは人だけの問題ではないのです。


おまけ―1:3月のインバウンドが308万1600人(過去最高)だったそうです。先日、出張先で帰りの新幹線がすべての席が満席。往復予約しておかないとヤバいです。

おまけー2:日曜劇場の「アンチヒーロー」、VIVANTのチームが製作しているだけのことはある作品。あんな弁護士いないぞ、と思うものの面白いです。

おまけー3:5月24日の14時から17時の枠で、この4月に新社会人になった人を対象に「育ててもらえる力」のオンラインセミナーをやります。詳細は追ってお知らせしますねー


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