伝える力を鍛えるには?ビジネスで使える3つのフレームワークを紹介

「いつも相手に自分の意図が伝わらない」
「取引先に納得してもらえない」
「説明しても上司がなかなかわかってくれない」

このようにビジネス上のコミュニケーションでお悩みの方も多いでしょう。これらの悩みは、いずれも「伝える力」に起因する可能性があります。

どうすれば相手が納得し、行動してくれるような伝え方ができるのか。この記事では、人材育成プログラムを提供するIndigo Blueより、「伝える力」の本質と便利な3つのフレームワーク、伝える力を鍛える方法をご紹介します。

ビジネスでの「伝える力」を向上させたい方は、ぜひ参考にしてください。

伝える力と同等以上に重要な力

相手に伝える力

相手に伝わる話し方のフレームワークを知る前に、伝える力と同じくらい重要な力である「聴く力」をおさえておきましょう。

そもそも「伝える」とは、相手があって初めて成立する行為です。相手がどんな状況にあるのか、自分の話に何を期待しているのか、話に対してどんな感情を抱いているかを汲み取れなければ、一方的に自分の意見をぶつけるだけになってしまいます。

だからこそ、相手の表情や感情を感じ取り、真意を汲み取る「聴く力」が重要です。

「聴く」と「聞く」の言葉には、明確な違いがあります。

聞く

相手の言葉をヒアリングするアクションそのもの

聴く

相手の言葉だけでなく、表情や声色などにも注目し
真に伝えたい想いや意図を汲み取ること

プレゼンテーションをするときも、部下に何かを指示するときも、相手が何を受け取っているかを感じ取る「聴く力」がベースになります。相手の表情から理解度を推し量ったり、より伝わる言葉に言い換えたりすることで、「伝える」のベースが整います。

そんな「聴く力」を身につける一歩として、まずは「LILIの法則」を身につけましょう。

【LILIの法則とは】

効果的な意思疎通の方法として提唱された法則。以下のステップで対話を進めると、自分の意図を正確に相手に伝え、巻き込むことができる。

  1. Listen…聴く
  2. Inform…伝える
  3. Lead…導く
  4. Involve…巻き込む

まずは、相手の意見や状況を聴く。そのうえで、自分の考えや依頼内容を伝える。伝える力がある人は、この順序を守ることで聞き手の受容性や主体性を引き出しています。伝える最中にも、相手の反応をしっかり聴くことで、より正確に、効果的に相手に「伝える」ことができます。

伝える力を身につけたい人は、技術的なフレームワークを身につける前にまず相手の話を「聴く」ことから始めてください。

※LILIの法則についてはこちらの動画もご参照ください。

相手に伝えるために有効な「3つのフレームワーク」

伝える力とフレームワーク

「まずは聞く」のコツをおさえた上で、効果的に相手に伝えるための具体的なフレームワークを身につけましょう。

今回は、シンプルで効果的なフレームワークを3つご紹介します。

  1. 空・雨・傘
  2. 提案を採択させるための3つのwhy
  3. 意思決定者に決めてもらうための5つの流れ

それぞれの概要と、特に効果のあるシーン、活用例をご紹介します。

①空・雨・傘

空・雨・傘

概要

事実・仮説・行動の順で論理的に説明する

特に有効なシーン

  • 他者に行動を促したいとき
  • 自分の行動の意図を説明するとき

「空・雨・傘」は、論理的なストーリーで相手の納得感を引き出すのに有効なフレームワークです。

空・雨・傘は、それぞれ以下を表しています。

  • 空:事実(今、空が曇っている)
  • 雨:仮説(雨が降るかもしれない)
  • 傘:行動(傘を持っていこう)

現状を示したうえで、想定される仮定を伝え、相手に行動を促します。この順番に話すことで、提案の背景が理解でき、聞き手は納得感を持ちます

とてもシンプルなフレームワークですが、実際の会話では「事実(=空)」の深掘りが不十分だったり、「仮説(=雨)」が説明から抜け落ちたりしていることが多々あります。

【悪い例】

提案者:営業職の中途採用ですが、1月は1名も採用できませんでした。対策として、当社の採用サイトを新設したいです。

承認者:(なぜ採用サイト…?)

上記の例では、「1月の中途採用者0名」という事実に対し、いきなり「採用サイトの新設」が行動として提案されています。事実の深掘りが浅く、仮説も話されていないために、聞き手には提案の意図が伝わりません

空・雨・傘のフレームワークを用いると、以下のように提案することができるでしょう。

【良い例】

提案者:営業職の中途採用ですが、1月は1名も採用できませんでした。現状を分析したところ、求人広告から自社ホームページまで移行する人は月80名いましたが、その後の応募につながった人が1名しかいませんでした。(=事実)

求職者への「認知」はできているものの、現在のホームページは事業内容しか記載がないために、応募に至るまでの「興味・関心」を引き出せていないと考えます。(=仮説)

そこで、当社で働く魅力に特化した採用サイトを新設したいです。(=行動)

承認者:(たしかに、原因に対して有効な手段といえそうだな)

現状を深掘りし提案に至る仮説を説明することで、一連の主張にストーリーが生まれ、納得感が増します。

他者に行動を促したいとき、自分の言動の意図を相手に納得してもらいたいときは、この「空・雨・傘」のフレームワークを活用しましょう。

②提案を採択させるための3つのwhy

3つのwhy

概要

3つのwhyを語ることで採択者に行動を促す

特に有効なシーン

  • 企画を提案するとき
  • 商品提案をするとき

「3つのwhy」は、自社製品の紹介時などに有効なフレームワークです。「3つのwhy」とは、以下の通りです。

【3つのwhy】

  • why this?:なぜ、この提案が有効なのか
  • why me?:なぜ、自分たちが最適な担い手なのか?
  • why now?:なぜ、今なのか?

この3点が揃った提案は、「私たちの抱える課題を解決するために、この商品を今すぐこの企業から購入しよう」という意思決定を促します。

逆に、この3点のいずれかが欠けた提案は、決定力のない弱い提案になりがちです。

【悪い例】

提案者:今日私たちがご提案するこちらの家庭用蓄電池、一度充電しておけば10時間連続で使用できます。専用のソーラーパネルを使用することで、太陽光を利用した充電も可能!いざというときの非常用電源として、一家に一台あると便利ですよ!

購入者:(うーん。便利そうだけど今じゃなくてもいいかな。他にも良い製品もあるかも)

上記は「why this」の説明に終始しています。商品の機能は伝わりますが、why me?とWhy now?が語られていないため、購入検討者からは「今すぐ買う理由がない」「この企業から買う必要性がない」と判断される可能性があります

【良い例】

提案者:近年、地震などの自然災害が続いていますよね。首都直下型地震なども心配されています。そんな中で大切なのが、非常時の電源の確保。

今日私たちがご提案するこちらの家庭用蓄電池なら、特許を取得した蓄電方法により、一度の充電で10時間の連続使用が可能です。専用のソーラーパネルを使用することで、太陽光を利用した充電も可能!この2つの機能を持った蓄電池は当社製品だけです。

本日限定で、30%割引で提供しています。今夜にも訪れるかもしれない自然災害に備えて、ぜひ一家に一台常備しましょう。

購入者:(確かに最近は地震が多くて不安だったんだよな…今ならオトクだし、他社製品より良さそうだし、購入しようかな)

3つのwhyを効果的に説明できれば、相手に自社製品の魅力や今買うべき理由が納得感をもって伝わります

商品・サービスを提案したいとき、企画提案をするときなどは、3つのwhyを意識しましょう。

③意思決定者に決めてもらうための5つの流れ

意思決定者に決めてもらう5つの流れ

概要

意思決定者がほしい情報だけを提供し決定を促す

特に有効なシーン

  • 上長に判断を仰ぐ必要があるとき
  • 短時間で重要な決定を下してもらう必要のあるとき

「意思決定者に決めてもらうための5つの流れ」は、より少ない言葉で効率的に意思決定者に必要な情報を提供し、決断してもらうためのフレームワークです。以下5つの順で、意思決定者への報告を行います。

【5つの流れ】

  1. そもそも何が問題なのか?
  2. 何を決めるべきなのか?
  3. 決めるにあたっての論点(ポイント)は何か?
  4. 選択肢は何があるか?
  5. (その選択肢の中で)提案者の意思は?

上記の順で説明すれば、上長がどのような状況下でどんな決断をすべきなのか、短時間で決定する手助けになります

逆にこの5つの流れをおさえていない相談は、上司に必要な情報が伝わらず、決定を遅らせる原因になります。

【悪い例】

部下:最近、リモートワークの社員から、在宅勤務のサポートが不十分だとの声が多く聞かれます。特に、自宅での作業環境に関する不満が目立ちます。

いくつか改善策を考えたんですが、どれが最適か迷っています。ホームオフィス用品の支給、オンラインでの健康管理プログラム…それとも何か別の方法がいいでしょうか?正直、どの方法もコストがかかるので、どうすればいいか悩んでいるんです。

上司:(うーん。問題がぼんやりしているし、選択肢の内容も詳細が分からないので判断できないなぁ。)

上記の報告内容は、社員から不満が上がることでどのような問題が顕在化しているのか、何を論点に対策を考えるべきかなど、重要な情報が抜けています。選択肢の詳細や、部下が推奨する案もわかりません。

【良い例】

部下:現在、リモートワークをしている社員からのフィードバックによると、在宅勤務環境の設備が不十分で、生産性に影響が出ています。実際に腰痛を発症して病欠する者が出ており、アンケートでは肩こりやめまいで生産性が下がったと回答した社員が7割でした。

リモートワーク下での生産性を担保するために、社員のホームオフィス環境を改善する具体的な支援策を決定する必要があります。

決定にあたってのポイントは、予算、支援の範囲(オフィス家具、IT機器など)、支援策の持続可能性の3点と考えます。

そこで、以下4つの案を考えました。

①ホームオフィス設備の購入費用を一定額まで補助する
②毎月一定のリモートワーク手当を支給する
③会社指定の設備を貸与する
➃支援策を実施しない

私がご提案したいのは①で、1名につきホームオフィス設備の購入に対して最大30,000円まで補助することが望ましいと考えます。対象設備は、デスク・チェア・PCスタンドの3点に制限します。これにより、社員のホームオフィス環境が改善され、生産性の向上が期待できます。また、1人1回の補助なので予算の見積もりがしやすく、制度の持続性もあります。いかがでしょうか?

上司:(なるほど。それなら現実的に問題を解決できそうだな)

5つの流れの通りに提案することで、上司が短時間でも意思決定しやすい状況を築くことができます。

「上司に相談したけど、何も決定してくれなかった」とお悩みの方は、ぜひこの5つの流れを意識してください。

ビジネスで伝える力を鍛える方法

ビジネスで伝える力を鍛える方法

ここからは、具体的にビジネスで伝える力を鍛える方法をご紹介します。伝える力を鍛えるためには、以下のステップでトレーニングすることが大切です。

【伝える力を鍛えるステップ】

  1. 伝える力の本質・フレームワークをインプットする
  2. 実際にアウトプットして練習する
  3. 実践で自分にできていること・できていないことを知る
  4. 改善する

まずは、本記事でご紹介した「LILIの法則」や伝えるためのフレームワークをしっかり学びましょう。そのうえで実際に伝える経験を重ね、自然と相手に伝わる話し方ができるようになるまで実践を積む必要があります。

異業種 Future Leaders 共創塾

FL共創塾

対象

企業や組織でリーダーを目指す方

定員

各回最大20名

日数

2日間

実施方法

オンライン(zoom)

費用

128,000円/人
(税込価格:140,800円/人)

ビジネスで伝える力を鍛える効果的な場として、Indigo Blueがご提供する「異業種 Future Leaders 共創塾」をご紹介します。

異業種 Future Leaders 共創塾は、「今後リーダーを目指す人」「将来リーダーになることを期待されている人」のための実践型ビジネススクールです。講師から一方的にインプットするのではなく、異業種/複数社から集ったメンバーが、「リーダーとなるための土壌」を共に創っていくプログラム構成になっています。

「伝える力」をはじめ「俯瞰力」「周囲を巻き込む力」などを実践の中で磨きます。

【プログラム内容】

  • リーダーシップ講義
  • ストーリー構築に基づく提案の実践
  • 有事ビジネスシミュレーション「Organization Theater®」
  • プレゼンテーションワーク ほか

複数の実践的な体験型シミュレーションを通じて、自分の「伝える力」の現状や課題が見つかります。同世代の他社人材と切磋琢磨する中で、今後の成長に重要な気づきを得ることもできるでしょう。

伝える力を鍛えてビジネスパーソンとして成長しよう

どんな仕事も、一人で完結することはありません。だからこそ、相手に正しく伝える力、相手を動かす伝え方は、仕事をするうえでとても重要なスキルといえます。

一方で、「伝える力」は知識だけ持っていても身につきません。ベースとなる考え方や便利なフレームワークを知り、何度もアウトプットして体得していく必要があります。

研修などの機会を活用しつつ、ビジネスパーソンに欠かせない「伝える力」をぜひ磨いてください。


記事監修

瀧谷 知之(Indigo Blue 取締役)

トーマツ コンサルティング(現デロイト トーマツ コンサルティング)に入社し、通信ハイテク業界の戦略立案/変革支援に従事。 その後ジュピターTVを経て、ツタヤオンライン、TSUTAYA、カルチュア・コンビニエンス・クラブで経営企画/経営戦略室長として、ネット事業領域を中心に戦略立案や事業改善、新規事業企画、赤字事業の再建/撤退、M&A等を手掛ける。 2010年に株式会社コラビーを設立し代表取締役CEOに就任のほか、パス株式会社の代表取締役COOおよび各グループ会社の代取/取締役を経て現在に至る。今までに上場企業含め9社の代取/取締役を経験している。


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