最近、こういう声をよく聞きます。
“会社の自席でタバコをくゆらせるのが当たり前のころは、会社の中に嫌な奴があちこちにいた。いまはそんな人はいない。表面上はいい人ばかりだ。ただネット上には嫌な奴ばかりいる。”
“不適切にもほどがある時代はあり得ないこともあったが、居心地は悪くなかった。いまは一見クリーンだが、なんだか居心地が悪い。”
“良かれと思って発言したところ、一方的にハラスメントと言われた。怖くて何も言えない。”
昭和世代の心情を的確に表現していると思いました。
かつて働き方改革を検討する内閣府の委員会で、“サービス残業を強いるブラック企業だとわかったら、さっさと辞めたらいい“と発言したところ、”柴田さん、それは強者の意見だ。“といなされました。
意見、不平、不満がある社員に対して、直接は言えないだろうから・・・とか、言うことで不利益を被らないように・・・、と公益通報の仕組みがどんどん整っていったり、退職代行のようなサービスが生まれたり・・・。この潮流に違和感を覚えています。
自分が思うことは自分で発言する。/自分の意思に従って行動する。
時代がどう変わろうと、これらは基本だと思うのです。
ただ、特別な事情があり、自ら動かない方がよいこともあります。通報制度や代理人はそういう特別なときのための「セーフティネット機能」だと思うのですが、それが主流になって
きている感があります。
その背景にあるのは、“一緒に働いているが、どういう人か実はわからない。何をされるかわからない。表面上は”いい人“だが、ちょっとしたことで突然批判されるかもしれない”という心理、怖いと言う感情だと思います。
人と人の心の距離が遠いのです。コミュニケーションの絶対量が不足していると思います。
SNSでいくらやりとりしても、カバーしきれません。コミュニケーションは言葉と表情・声のトーンによるものです。言葉で表現しきれない内容、想いを表情や声のトーンなどで補うものです。SNSにはキャラクターや絵文字がありますが、実際の表情や声のトーンを代替できるものではありません。
リモートワークもこの風潮に拍車をかけていると思います。私はリモートワーク推奨派です。リモートワークは仕事と私生活のバランスのために欠かせません。だからこそ、組織内のコミュニケーション量の確保のために工夫が必要だと思うのです。
どんな組織であっても、目指す姿は“Help each other, respect each other.”です。 このためにまず必要なのは“Know each other.” お互いにお互いを良く知ることです。
コミュニケーションの良し悪しは一緒に過ごす絶対時間の量に比例しますが、一緒にいるだけでは足りません。お互いに良く知る機会を設けましょう。最近、このためのオフサイトミーティングのファシリテーションを務める機会が連続して、その意を強くしました。組織の長のみなさん、Know each otherの機会をつくりましょう。
人と人の心の距離が遠くなってしばらく経ちます。多くの人の心の壁が厚くなってしまっています。まずは心を揺さぶってほぐしましょう。
おまけー1:エンタメは人の心をほぐします。私のいまのお気に入りナンバー1ドラマは「ホットスポット」です。この日曜で終わってしまうのでロスになりそう。それにしても“大人になってからの友情”いいですねー。
おまけー2:映画「正体」(第48回日本アカデミー賞最優秀主演男優賞、最優秀助演女優賞など受賞)は心を揺さぶる作品です。まだ観ていない方はぜひ!
おまけー3:エンタメの世界でみらいのクリエイティブプロデューサーづくりをする「みらい塾(私は塾長です。)」の8期生の募集を始めました。年齢不詳、職業不詳。心を揺さぶるエンタメをプロデュースする存在になりたい方へのお知らせです。
https://watanabe-mf.or.jp/entry01/
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