970号「事業承継の覚悟」(メールマガジン「人事の目」)

11月3日の日経産業Smart timesに「オーナーへの進言」というタイトルのコラムを書きました。ビッグモーター問題について改めて考える機会があり、これは事業承継の失敗だと思ったことがきっかけです。

企業におけるトップは選挙で選ばれているわけではありません。トップは就任してから社員からの信任を得なければなりません。創業者は起業し成長させるために必死に働いている姿を見せていますので、なんだかんだ言っても、そこに強い信任があるものです。二代目以降(便宜上“ジュニア”と書きます)となると事情が異なります。

社員たちにオーナー家に対する忠誠心はあるでしょう。ただ、創業者と違い自社のビジネスの経験が乏しく、自分たちと一緒に苦労したこともないジュニアに信任があるわけではありません。そのジュニアが権力を振りかざすような言動を見せるとたちまち組織がおかしくなっていきます。

ジュニアが何を話しても意見が出なくなります。賢い社員ほど言っても無駄だと思うようになります。あっという間に「裸の王様」になります。その状況を憂い、意見をする人がいるものですが、その人に対して攻撃的になったり、排除したりするようになると”終わりの始まり“です。組織が内部から腐っていきます。

ジュニアに聞こえのいい事を伝える茶坊主たちがジュニアの脇を固め、真に会社のことを考えている逸材が会社から去っていきます。ジュニアの指示を守るために法令違反をしたり、倫理的に問題ある行動を採ったりするようになるのも時間の問題です。

私は世襲を否定しているわけではありません。世襲させるとしたら、それなりの覚悟と準備が必要だと考えています。まず、社会人になったジュニアをすぐに自社に入社させてはいけません。全く関係のない企業に勤めさせ、そこで”雇われる”ということを肌で理解してもらうことからです。その企業で自身の実力で課長になれるかどうか、これを、後継者とするかの判断材料とすることをお薦めします。親の威光がない企業で評価されない場合には自社であってもビジネスパーソンとして信任を得ることは難しいでしょう。その場合には事業に口を出さない純オーナーの役割を担ってもらう道を用意します。

ビジネスパーソンとして一定の力量を備えたら、そのタイミングで自社に入れます。その後は人間力を鍛えることを意識して経験させます。このタイミングでジュニアの意識づけとコーチングが必要です。社員の声に耳を傾けられる器を育ててもらいます。オーナーである以上、どんなに歩みよっても社員からすると距離があることを当たり前であると自覚して社員に接するようにしてもらいます。

あと数年でジュニアへの事業承継を考えているが、特に何もやってこなかったというオーナー創業者へ。今からでも遅くありません。まずはジュニアの覚悟を問い、自社と全く関係のない会社での武者修行(最低2年)、コーチング、精神修養の機会を設けましょう。

おまけー1:オーナー企業でオーナーの参謀たちを対象とする「格さんの会」(水戸黄門の“格さん”から)という勉強会をやってきました。その参謀たち9名が「来るべきAI時代にUseless人材の増殖を防ぐには?」というテーマで提言発表します。12月14日(木)朝8時半から10時(オンライン)です。

「人事の目」の読者の方々に提言発表会を公開します。ご都合よろしい方はぜひご参加ください。
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おまけー2:非上場のオーナー企業で「社外取締役」を置いているオーナー社長は“わかっています”。(たぶん)

おまけー3:11月16日のOT体験会、大好評でした!2024年1月31日にまたやります!カレンダーに印をつけておいてください。

 

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