Vol.764「企業ガバナンスのために」(メールマガジン「人事の目」より)

今日のテーマは企業のガバナンスです。

ガバナンスと言えば「社外取締役を過半数に」という展開になりがちです。社内の論理
だけで企業の意思決定がなされてはいかん。株主を代表して社外取締役が社内取締役を
監督せよ。過半数いれば社長の暴走を止められる・・・というようなロジックです。
このロジックそのものに大きな違和感があるわけではありませんが、その議論だけで
ガバナンスを語ることには違和感があります。

社外取締役の役割は意思決定の前に冷静な問いをすることだと思っています。意思決定に
直接的に関与することではないと私は考えています。私自身が社外取締役という立場で
取締役会に出席するときには、常にこの意識をもっています。例えば、大型の投資や
M&A案件など社内で検討を進めてきた案件は“乗った船からは降りられない”という
ムードになりがちです。社外取締役がすべきはこうした問いです。

“本来の目的は何であったか?(投資やM&Aは手段)”
“代替案はないのか?”
“実行後の推進計画は?(特に誰が責任者になるのか?)

かつて私自身が某社の取締役会の議長をしていた時に、社外取締役からの「問い」で
ハッとさせられたことがあります。その経験からも「冷静な問い」を心がけています。

しかしながら、「企業のガバナンス」という点からは「社外取締役の存在」だけでは
足りないと思います。数の問題ではありません。社外取締役の存在だけでガバナンスを
機能させるというのは“アメリカ流の株主重視”の思想です。それだけではないだろうと
思っています。

本来の意味でのガバナンスということであれば、利害関係者の声を網羅的に聞くべきだと
思います。代表的なものは顧客の声、メインバンクの声、地元の声、そして社員の声です。
社員の声として耳を傾けるべきは、組合・社員会、そしてマイノリティの声です。

マイノリティの声を軽んじてはいけません。もし、女性の活用が進んでいなければ
女性グループ、外国人社員、非正規社員、そして障碍者社員。こうした方々の声に
耳を傾けた上で会社のかじ取りをすべきです。

全ての利害関係者代表を取締役会メンバーとせよとは言いません。それは現実的では
ありません。取締役会メンバーが利害関係者の声を聞く機会を設ければよいのです。
私のおススメは“社内取締役と社外取締役がペアで利害関係者の方々と対話する”です。
4半期に一度で良いと思います。

一方的に何かの説明をする機会を“聞く機会”と勘違いしているケースも見受けます。
違います。経営陣が方針を説明したり、説得する場ではありません。あくまでも耳を
傾ける場です。その設営には十分気をつけるべきです。

声を聞く、ということはその声に従うということではありません。意思決定者として
多方面、多次元の声を聞いた上で意思決定をする。これが多くの利害関係者からなる
会社のかじ取りする場合の大事なプロセスだろうと思うのです。これがないから、
“えっ!”というようなことが起きて「ガバナンス不全」と言われることになるのだと思います。

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