910号「その労働観、違わないか?」(メールマガジン「人事の目」より)

先日、某学生団体による「政策提言コンテスト」決勝の審査員として登壇しました。

この学生団体は、東京大学・早稲田大学・慶應義塾大学・一橋大学などの関東の大学生を中心として構成されており、毎年夏に「学生のための政策立案コンテスト」を開催するほか、学生が政策立案を通して社会問題について理解し議論する場を、一年をかけて提供しています。(この団体のホームページより)優秀な学生たちによる勉強会としては最高峰の一つだと思います。

20年近く前にこの団体の集まりに顔を出したことがあります。粗削りではありましたが、世の中を変えてやろうという勢いがありました。頼もしい連中だと思ったことを覚えています。

今回のテーマは「労働」。“中小企業における働きがい、働きやすさの実現”、“農業の人出不足解消”、”長時間労働がなくなる働き方の追求“、”保育の担い手不足の解消“が決勝に進んだ提言でした。

いずれも目の付け所としては良かったです。話し方も堂々としており、さすがだと思わせるものでした。

一方で、彼ら彼女らの「労働観」を聞いて少なからずショックを受けました。これから社会に出ようとしている若者たちが、しかも官庁や社会的にインパクトと与える職業に就こうとしている連中が、「働くこと」についてこんな認識をしているのかと。

彼ら彼女らの「労働観」の根底にある理解はこんな感じでした(少なくともそう聞こえました)
・「働く」ということは、自分の時間を投入し、その対価をもらい生活を営むものである
・中小企業の経営者は社員の満足度を重視していない
・労働者にとって不適切な環境がある
・これらを改善、解消させないといけない、

“いったい、いつの話をしているのか?”と発言してしまいました。私の見立てと大きく違います。

特に「中小企業の経営者は社員の満足度を重視していない」という発言には驚きました。“この提言を聞いた中小企業の経営者は怒るか、がっかりするだろう”と申し上げました。しかし、これは彼ら彼女らの責任ではなく、大人たちのインプットの問題だと思いました。インプットが古(悪)過ぎます。

人々の就労観は変っています。劣悪な環境で働かせて儲けることだけを考えているような経営者は(ゼロとは言いませんが)減っています。コロナ禍による働き方の変化とそれに伴う意識の変化、副業の推奨、人口動態の影響などを受け、いまや「働く」ことに関するテーマは「いかに働くを楽しむか?(楽しめる環境をつくれるか?)」になっています。彼ら彼女らが問題として挙げたことは確かに存在します。しかし、それは底辺の一部だと思います。

公共施策についての考え方も変えてほしいと思いました。底辺の悪しき状況を改善させる、マイナスをゼロにする、ということよりも、いかに明るい社会をつくるか、今とは次元が違う素晴らしい状態を実現するか、こういう視点から政策を検討してもらいたいものです。

日本がこの30年で相対的な魅力度が落ちてしまっているのは、国の施策が底辺の問題解決に終始(または偏重)しているからではないか。未来ビジョンはたくさんつくられてきていますが、それを実現していこうという気概が政治家や官庁で圧倒的に不足しているのではないか。改めて問題意識を持つ機会となりました。

(ウクライナ人女性にとんでもない発言を繰り返し、パワハラで訴えられている奈良県の会社の管理職の報道がありました。こういうのがいるので底辺を何とかしないといけないと思うのはわかります。この事例、あまりにひどい。日本人として恥ずかしい。)

おまけー1:ATMで操作しているときにスマホに某クレジットカード会社から着電。
「そうそう、引き落とし口座を変えたいので、これから振り込みます。」と話していたら、いきなり
「大丈夫ですか!」と係員の人に腕を掴まれました・・・(オレオレ詐欺に騙される老人と思われた?)

おまけー2:アラフォー、アラフィフ以上の学び直しの場「PHAZEリカレント7期」10月12日開講です。
9月中にあと3回説明会をやります。うち2回は過去に受講し、その後運営を担っている「世話人」による開催です。ぜひ!

https://phaze.jp/recurrent/isession/

 

記事はメルマガ「人事の目」で配信されています。

 

メルマガ登録(無料)はこちら

 

関連記事


TOP
TOP